視覚障害について
視覚障害による身体障害者手帳を保持している方は、全国で約31万人(2013年)となっています。
視覚障害には、まったく見えない「全盲」、視力を矯正しても視力が弱い「弱視」、見える範囲(視野)がせまい「視野狭窄」などがあります。
また、生まれつきの障害(先天性)か、病気や事故などでの障害(中途障害)かによっても、その障害の程度により、支援方法も異なります。これらの人々の見え方・見えにくさを理解するのは、非常に難しいことです。
弱視の人の中には、何らかの視機能が残っていたりする人が多数いますし、見え方・見えにくさは一人ひとり異なっているといえます。
人間は、生きていくためにさまざまな情報を取得していますが、そのうちの約80%は目からの情報(視覚)によるといわれています。
その視覚に障害のある視覚障害者にとっては、日常生活の些細なことをはじめ、その不自由さは計り知れないものがあります。
それらの中で情報の収集と歩行・移動とが最も大きな不自由であるとされていますが、特に重度の視覚障害者にとっては、その克服には多くの困難があり、努力が必要とされます。
現在の身体障害者福祉法でいう視覚障害者は、視力および視野の二つの機能を基準にして、その障害の程度によって1級から6級までの等級が設けられています。
これらの等級のうち、3級から6級までは大活字や強度の眼鏡を使用することによって文字を読むことが可能ですが、1級と2級に該当する人の大部分は、点字または音声によらなければ文字情報を得ることができない重度の視覚障害者であり、視覚障害者全体の約60%となっています。
また、日本眼科医会の発表(2009年)では、この基準の枠に入らない「見えにくい方」も含めると、国内の視覚障害者は推計で164万人いるといわれています。
見えにくさについて
「見えにくさ」は病状によって違いがあります。ここでは、4つの代表的な「見えにくさ」を紹介します。
■一般的な見え方
建物の形、大きさや周りの空間を認識できます。
■ぼやけによる見えにくさ
近視や遠視などの屈折異常の場合、ピンボケの状態になります。図と背景の境界線が不明慮で、細かい部分を見分けることが難しくなってきます。拡大読書器の利用やパソコン使用時に画面拡大ソフトの利用などで文字や図を認知できます。
■まぶしさによる見えにくさ
白内障、角膜混濁などにより、まぶしさを訴える弱視の方もかなりたくさんいます。その人に合った照度の状況を提供する必要があります。支援にはサングラス・遮光眼鏡などが用いられます。
■視野の中心部が見えない見えにくさ
この状態は、黄斑変性症、視神経委縮などの眼疾患にみられます。視野の中心部の網膜部位が機能低下し、細部を認知することが難しくなってきます。
周辺部が重要になってくる歩行などは比較的困難さが軽減されます。文字を拡大すると、中心暗点で隠れる文字も相対的に減り、文字を確認しやすくなります。
■視野の周辺部が見えない見えにくさ
網膜色素変性症などにより、視野狭窄の状態になっていることがあります。物の全体像が構成できず、部分的な像で形状を認識することになります。
物を探すことが苦手になり、近くにある歩道橋・時刻表・灰皿などを探すことや、読書時の行替え、落としたものを探すことなどが難しくなってきます。
ですので、文字を拡大すればよいという考えは当てはまりません。文字を拡大すれば、見る範囲が狭いので、文字の全体が把握できず、読みにくくなってきます。その人に合った文字サイズを提供することが必要になります。